教育者の役割は環境を整えること

 教育者の役割は、環境を整えることに尽きるのではないでしょうか。ここで言う環境とは、物的環境だけでなく、人的環境も含みます。整った環境が準備されていれば、子どもは生まれ持った自分の力で自然に育ちます。大人があれをしよう、これをしよう、とむやみに動く必要がなくなります。では、具体的に「整った環境」とは何なのか、考えていきます。

【物的環境】

①子どもの発達を促してくれる、援助してくれるものがある
・微細運動を洗練させられるもの:指先を使った活動、力の入れ加減を調整する必要がある活動
・粗大運動を洗練させられるもの:走ったりジャンプしたりぶら下がったりできる環境や、逆に、動きを制限・抑制する機会を与えてくれる環境(狭いところ、静かに動かなければならないところなど)。
・五感を洗練させられるもの:様々な色、形、幾何学模様。美しい音、音階がわかるもの。様々な味やにおい、温度、感触。
・季節を感じられるもの:植物、生き物、食べ物など。自然のサイクル、摂理を体感でき、大きな動きや流れの中で生かされていることを実感できると良い。
・子どもが使いやすい道具(子どもサイズの道具。切れない包丁やハサミなどはNG)
・数学的思考力が育つもの
・言語能力が育つもの

②秩序がある
 生活空間は、掃除や整理整頓をして清潔に保ち、秩序立っている方が、子どもにとっては居心地が良く、活動しやすいです。自分でルーティンを作りやすく、自立にもつながります。物の定位置が決まっていれば片付けまで1人でできます。
 世界全体は複雑で奥深く、未知のもので溢れている無秩序空間であるからこそ、このような生活空間が維持されていることに価値が生まれます。


【人的環境】

①子どもの発達について理解している大人
 年齢に応じた子どもの発達について理解し、発達段階に合わせた対応、援助ができることが大切です。何ができて何ができないのか、何につまずいているのかなど、細かく観察できると良いです。

②先入観や偏見を持たない大人
 「この年齢ならこれができるはずだ」「この子はこういう子だから」「男の子/女の子だから」といった様々な先入観や偏見は取り除く必要があります。規則やルールについても、「こうあるべき」と捉われるのではなく、状況に応じて前提そのものを見直せるような柔軟性も求められます。

③子どもを尊重し、肯定的に関われる大人
 子どもを子ども扱いせず、1人の人間として尊重し、抑圧的にコントロールしたり誘導したりしようとしないことが大切です。子どもの感情や欲求を汲み取り、否定しない(”ない”ものにしない)ことです。それによって子どもは「ここは安心できる」「自分はここにいていいのだ」と実感することができます。

 以上の環境を完璧に整えることは難しいです。ゴールはありません。子どもの姿は日々変化するからこそ、環境もそれに応じて変化させる必要があります。「整った環境」とはどのようなものか念頭に置き、自分自身を見つめ直すことも含めて、より良い環境づくりをしていくことが教育者の役割です。
 上に挙げたことの他にも、子どものために準備できることはたくさんあります。同じコミュニティーの教育者(大人)同士が話し合いながら改善していけると良いですね。