人と人が、魂と魂で向き合うような教育を。
「魂」という言葉は科学的ではなく、その存在は誰も証明することができません。あるかないかは分かりません。それでも私があえて教育においてこの言葉を掲げていこうと思ったのは、10年以上前になりますが、心理学者の河合隼雄さんがその著書の中で使っているのを読んだことがきっかけです。たしか「魂としか言いようがないもの」と表現されていました。人間の心を見つめ続けてきたこの人がそう言うしかないのなら、その通り信じてみようと思いました。私も同じようにイメージしていたからです。
私にとって魂とは、一人の人間が生まれてから死ぬまで変わらず核として宿しているものです。「その人らしさ」としか言いようのない、何十年経っても変わらない、あの感覚です。魂には形がないので、その生と死のタイミングは時計やカレンダーで計れるものではなく、受精からゆっくり少しずつ一人の人間の肉体に宿り、心臓が止まって脳の機能が止まるとまた少しずつどこかへ消えてなくなっていく、そんなイメージです。遺伝子や脳の研究がもっと進めば、客観的に論理的に説明できるようになるかもしれないし、もしかしたら人工的に作り出せるようになるかもしれませんが、未だ解明されていないことは多いので、仮に「魂」と呼んでも良いのではと思っています。もしかしたら何かの宗教が同じような思想を持っているかもしれませんが、私は特定の宗教を信仰しているわけではなく、自分で考えています。
教育現場で人と人が関わり合うにあたり、単に言語や道具を媒介とするだけではなく、魂と魂が呼応するような場が生成されると、それは素晴らしい環境になると思います。
2023.1.3